『WHAT’s IN?』2月号に掲載されている、2011年のアイドル・シーンをふたりの論客が語った「LOOK BACK SCENE アイドル」。誌面ではとても収まりきらなかった対談を、WHAT’s IN? WEBで完全収録!これを読めば2012年のアイドル・シーンをさらに楽しむことができるはず!!まずは前編をお届けします!!!
PROFILE
高木”JET”晋一郎(ONBU)
雑文業。ヒップホップ / R&Bを中心に、ポップス、アイドルなどのインタビューから、オカルト原稿まで節操なく執筆。共著に『ラップのことば』(P-Vine)など。
http://twitter.com/TKG_JET_SHIN
南波一海
音楽ライター。アイドルを様々な角度から批評する『OTOTOYアイドル研究室』講師。エクストリームな音楽が好き。2011年最後に行ったイベントは大晦日のNegicco×hy4_4yh×BiS、今年最初は1月3日のハロコンでした。
高木”JET”晋一郎 2011年のアイドル・シーンということですが、売り上げ枚数や露出、社会需要から考えても
AKB48 は超高値安定という感じでしたね。売り上げや経済効果を含めて、AKBがいなかったら他のアイドル・グループは出てこれないぐらいの牽引力をここ数年維持してるし、その流れがさらに強まった1年だったなって。
南波一海 そうですね。音楽そのものよりも、彼女たちの生み出すストーリーやメンバー個々のストーリーも含めて、非常におもしろいですよね。売り上げってことで考えても、この後につけてるであろう
SUPER☆GiRLS や
アイドリング!!! に20倍近い差をつけてるんじゃないですかね。AKB以外のアイドルは5万枚越えが精一杯って感じですからね。
高木 音楽的な部分だと、オクターブの制限や展開の制限が強い曲構成が多くなりましたが、それでも万人に届くキャッチーな曲を提示しているのは印象的でしたね。
南波 2008年の「大声ダイヤモンド」はどうかしてるってくらいに転調に次ぐ転調で驚いたんですけど、2011年はチャレンジングな曲が少なかったですね。クオリティは維持されて手堅いけれども、もうちょっと冒険が聴きたいなって。「上からマリコ」も歌詞は刺激的なんだけど、曲はいかにもAKBだなって。
高木 でも、ある意味ではキャラクター性の強い「上からマリコ」をポップスとして成立させたのはスゴいですね。それは篠田麻里子のキャラクターを多くの人が共有できてるってことですから。
VIDEO
【PV】 大声ダイヤモンド / AKB48 [公式]
VIDEO
【PV】上からマリコ ダイジェスト映像 / AKB48[公式]
南波 AKBの曲ってベースもドラムもスゴく絞ってるじゃないですか。今はクラブ・ミュージックとの親和性の高いアイドル・ソングも多い中で、あれだけ低音が引っ込んでるのも珍しいなって。
高木 ももいろクローバーZ が『バトル アンド ロマンス』でベースや鳴りの部分にもかなり注力して、アイドル・ポップとして歪な雰囲気を漂わせていたのとは対極でしたね。
Not yet や
渡り廊下走り隊7 などの、AKBからのサブ・ユニットも好調な中で、ダンス&ヴォーカル・グループとして生まれた
DiVA への反応がいまいち芳しくなかったのはそういう部分が作用してるんですかね。メンバー的には充実したグループのようにも思えたんですが。
南波 DiVAはアイドル感もあんまりないですからね。でも、DiVAもそうですが、
SKE48 、
NMB48 も含めて、どのグループ/ユニットも普通のアイドル・グループから考えるとブレイクしてますよね。NMBは関西圏だとTVのレギュラー数もかなり多いみたいですから。それから、AKBの公式ライバルである
乃木坂46 も、まだCD出してないのにテレビの冠番組があったり、認知度はかなり高いですよね。
VIDEO
DiVA / 「月の裏側」MVショートver.
VIDEO
Fairies / More Kiss (Full Ver.)
高木 ここ最近、多くのアイドルが地道な活動の中で認知度を高めていく方向性が強い中で、乃木坂は久々にメディア投下型の打ち出し方でしたね。
南波 Fairies もそういう部分があったけど、乃木坂の方が強烈でしたね。かつ、どちらのグループも物語性の打ち出しという部分は意識的にやってて。
高木 乃木坂は「乃木坂って、どこ?」でキャラクターの打ち出しやグループのメインを張る“七福神”への選抜をドキュメント的に追いかけてましたね。
南波 Fairiesも「スッキリ!!」で彼女たちへの密着映像を流したりするなど、個々の持つ物語を詳らかにしていて。
高木 それによって、ファンへの訴求力を高めると。『ASAYAN』があった頃の
モーニング娘。 が意識的にそれをやっていましたが、いまだにそれは有効だということですね。僕としてはAKBへの光宗 薫の投入がどういう波紋を起こすかが、この対談をしている2011年12月初旬の段階ではホットな話題なので興味がありますね。
南波 ある意味、乃木坂の子たち以上にすでにビジュアルが完成されてるじゃないですか。不完全なモノが成長していく過程を見せるAKBにおいて、完成された光宗 薫の参加がどういう意味を持つんでしょうね。
高木 それこそAKBの“ほつれ”になるんじゃないかなって。やや膠着化しつつあるAKBに新陳代謝を起こす存在になるとおもしろいなって現状では思いますね。メンバーが光宗に対してキャアキャア言ってる百合感も含めて(笑)。AKBは2012年も2011年のように見ない日はないって感じになるんでしょうかね。
南波 AKBはもう水や空気みたいな存在になるんじゃないでしょうか。常に遍在するというか。小林よしのりさんであったり、宇野常寛さんであったり、思想系の論者の方もAKBについて語り始めてたり、カルチャー・サイドからもAKB推しがまた新たに始まってて。そうなるともう無敵なんじゃないかなって(笑)。来年ということでは、
HKT48 が曲出したらすごく売れるんじゃないかって気がするんですよね。
高木 ハロプロも再び注目を集めていて、ある意味では王道回帰感を感じますね。
南波 僕もハロプロ追っかけてます。AKBの後にももいろクローバーZをはじめとするアイドルがたくさん登場して、その中で曲やスキルも注目されたワケですけど、改めてその視点でハロプロを見直したら、やっぱりスキルが日本一スゴかった。ずっとコンサートをやり続けてきたから、その地力がスゴいし、歌も当たり前のようにうまいんですよ。おっしゃる通り、ここに来て再注目されている感がありますよね。
VIDEO
モーニング娘。『ピョコピョコ ウルトラ』 (MV)
VIDEO
真野恵里菜 「青春のセレナーデ」(MV)※フルバージョン
高木 前述の通り、今のアイドルの定番である、物語を見せるっていう雛形自体がハロプロ / モーニング娘。の流れですからね。
南波 トップ集団の平均年齢が上がりつつあるAKBに対して、モーニング娘。はガッと年齢落として戦闘体制に入ってるし、今やフロントとなった道重さゆみや田中れいなも気合い入ってますから。ただ、
スマイレージ が本当はいろいろなアイドルへの対抗軸になる感じだったんですけど、消耗戦に巻き込まれてしまった故か、離脱が相次いでしまって。その意味でも2011年はアイドルの脱退/卒業が本当に多かったですね。
高木 ももクロの早見あかり、スマイレージの小川紗季の前田憂佳、
ぱすぽ☆ の佐久間夏帆、
私立恵比寿中学 の宮崎れいな……などなどと数え上げればきりがないし、“これから”って段階での脱退が目立ちましたね。
VIDEO
スマイレージ 「ショートカット」 (MV)
VIDEO
ぱすぽ☆ / 少女飛行(ショートバージョン)
南波 それが理由の全部ではないだろうけど、握手会などのいわゆる接触商法でCDの売り上げを伸ばそうとして、稼働超過になってしまって本人たちが疲弊してしまうって構造は少なからずありますよね。……ああ、暗い気持ちになってきた(笑)。
高木 (笑)。いい話だと、2011年はホントに良い楽曲が多かったですね。
南波 本当に! アルバム単位じゃなくても、シングルでもボンボン名曲が出てて。2011年は大豊作ですね。もう、今のアイドル・シーンは日本語ラップでいうところの“さんピンCAMP”前後のような、“どの曲もクラシック”状態ですよね。
高木 ハハハ。その意味では、当時一歩抜け出た存在としてスチャダラパー=AKB、エモーションを喚起する存在としてYOU THE ROCK=ももクロ、垢抜けた音楽性を提示するBUDDAHA BRAND=
東京女子流 でしょうか……この例えは色んな方面から怒られそうですが(笑)。でも、あの当時の日本語ラップに喰らった衝撃を今のアイドル・シーンからリアルに感じるんですよね。ラッパーという意味では、かせきさいだぁが
でんぱ組 inc. の「くちづけきぼんぬ」を手がけたり、
さくら学院 「さくら百人一首」でのラップ・パートのディレクションをBose(スチャダラパー)が手がけたり、そういう交流も多くて。僕は元Cymbalsの沖井礼二さんが
Twinklestars の「Dear Mr.Socrates」を手がけたときはぶっ飛びましたね。
VIDEO
でんぱ組.inc「くちづけキボンヌ」Full size
VIDEO
Twinklestars「Dear Mr.Socrates」
南波 やっぱりアイドルはコンスタントに売れるから、良い作家が集まりましたね。そして作詞家/作曲家/アレンジャーが注目されるっていうのは本当に良いことだと思います。J-POPでもしばらくそういった部分での注目はほとんどなかったですから。そしてそれは、やっぱり曲が良くないとダメっていう流れがあるからだと思います。曲が良いっていう前提があって始めてアイドル・シーンの土俵に立てるぐらいの感じがありますね。パフォーマンスでも生歌で歌うっていうのが重要になってるし、東京女子流はそういった流れの最たる形だなって。地方アイドルはまだそうでもないですが。
> 後編に続く!